「国立大」「早慶」進学率でわかった (文春 H22.1.28号 萩原絹代氏 記事より抜粋)
 中学受験をする子供が増えている。全国で758校ある私立中学のうち約四割が集まる首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉の一都三県)では特に伸びが著しい。受験率は首都圏全体では5人に1人、東京都に限ると、なんと3人に1人が受験をすることになる。東京のなかでも受験率の高い千代田区、文京区などでは、入試が始まる2月初旬には半数以上の子供が休み、授業が成り立たない小学校もあるほどだ。バブル崩壊後、減り続けていた中学受験者数が増加に転じたのは、02年の「ゆとり教育」の導入以降だ。カリキュラムの極端な減少に危機感を抱いた親が私立を選んだ。私立校では独自のカリキュラムで中高一貫教育を行っている。

さらに、ここ数年で公立の中高一貫教育校が次々開校し、受験生の裾野が一気に広がった。現在、首都圏には13校あるが、今春には都立四校が開校する。中学は無料、高校も授業料は都立や県立と同じで、応募者が殺到した。中学受験を考えたことのない層が塾に通い始め、私立に目を向けるきっかけにもなった。不況だからこそ、子供にはいい大学を出て、安定した仕事をしてほしいという親の願いは切実だ。日本政策金融公庫の調査によると、親の年収に対する教育費(大学卒業まで)の割合は平均33.7%だ。年収400万円未満の層では48.3%にも及ぶ(09年度)。他の支出を削ってでも教育費を捻出しているのだろう。では受験を突破して私立校で学んだ子供たちはどんな大学に進学しているのだろうか。

それでは通うに値する私立中学とは?

東京都練馬区にある高校受験専門塾の大泉英数研究室では「通うに値する私立中学は存在するのか?」と題して興味深いデータを公表している。学校や雑誌の発表をもとに、難関大学への現役進学者が卒業生に占める割合を算出しているのだ。(東京大、京都大、東京工業大、一橋大、国公立医学部は合格者ほぼ全員が入学するために合格者数を使用、早稲田大、慶応大は実際の進学者数を使用)。

表 進学率ランキングをみるとトップ進学校を除き、驚くほど低い数字が並んでいる。トップ進学校は狭き門なので、大半の生徒は中堅校に行くことになるが、難関大学に進めるのは、わずか一、二割だ。全国の現役高校生の難関大学合格率は3.3%だが、その平均値を下回る実績しか出せない私立もたくさんある。同研究室の小西徹治氏は数字をみながらこう強調する。「私立校に6年通ったら相当な費用がかかります。それなのに特別な費用がかからない都立や県立高校に合格実績で劣る場合は、高額な費用をかけて通う価値があるとは思えません。そう言うと、公立擁護派のように思われますが、僕は中学、高校、大学もすべて私立です(笑)。私立の実態を見てきたからこそ、問題点もよくわかるのです。」表をみると、都立、県立の進学校は大体、10~20%台にならんでいる。教育環境などを度外視して、費用対効果だけで評価した場合、実績が公立よりも低く10%にも届かない私立は進学校として魅力があるとは思えない。やはり15%はほしい。小西氏によると、昨年からデータを研究室のブログに載せ始めたら、「数字が間違っているのではないか」というクレームが何度も寄せられたそうだ。かなり攻撃的な文面もあり,クレームの主はそれらの私立校に子供を通わせている親たちではないかという。我が子の通う学校の進学実績も知らないのかと疑問に思うが、小西さんはその背景をこう説明する。「ほとんどの学校が大学合格者実績として発表しているのは、"のべ合格者数"なのです。国公立大は同時に1校しか受けられませんが、私立大は1人で何校も受ける。1校受かるたびに1人としてカウントしていったら、何倍もの数になってしまいます。なかには合格者数と実際の進学者数の両方を公表している良心的な学校もありますが、まだわずかです。"のべ合格者数"だと注釈すら入れていないところが多い。受験業界では塾や予備校だけでなく、学校まで、実際よりもはるかに水増しして合格者数を発表して、真の実績とはかけ離れた幻を保護者に印象付けているのです。」
学校名 進学
実績(%)
中学
偏差値
筑波大付属駒場中・高等学校 61.2 74
桜陰中学校・高等学校 46.2 71
女子学院中学校・高等学校 42.5 68
白百合学園中学高等学校 34.7 58
横浜雙葉中学高等学校 34.7 58
頌栄女子学院中学校・高等学校 34.2 59
東京都立日比谷高等学校 31.3
渋谷教育学園渋谷中学高等学校 29.5 64
暁星中学・高等学校 28.4 59
豊島岡女子学園中学校・高等学校 28.4 66
雙葉中学・高等学校 27.7 66
芝中学・高等学校 27 61
神奈川県立柏陽高等学校 26.3
横浜共立学園中学校・高等学校 26.2 58
桐朋中学・高等学校 25.8 61
武蔵中学校・高等学校 24.6 63
晃華学園中学校・高等学校 23.4 56
神奈川県立横浜緑ヶ丘高等学校 22.8
帝京大学中学校高等学校 22 51
東京都立国立高等学校 21.7
埼玉県立浦和高等学校 19.2
洗足学園中学高等学校 19 60
埼玉県立大宮高等学校 18.5
湘南白百合学園中学・高等学校 18.5 58
光塩女子学院中等科・高等科 18.1 52
吉祥女子中学・高等学校 16.4 61
公文国際学園中等部・高等部 16.4 60
栄東中学校・高等学校 14.9 63
東洋英和女学院中学部・高等部 14.9 58
東京都立国際高等学校 14.3
千葉県立船橋高等学校 14.1
國學院大學久我山中学高等学校 14 62
千葉県立東葛飾高等学校 13.8
逗子開成中学・高等学校 13.8 59
山手学院中学校・高等学校 13.7 52
東京都立戸山高等学校 13.4
本郷中学・高等学校 11.6 61
高輪中学・高等学校 11.6 59
開智中学校・高等学校 11.1 64
公立女子中学高等学校 10.6 55
森村学園中等部・高等部 10.5 51
富士見中学高等学校 10.1 53
城北埼玉中学・高等学校 10 53
桐蔭学園中学校・高等学校 8 53
淑徳与野中学校・高等学校 7.6 61
カリタス女子中学高等学校 7 54
西武学園文理中学・高等学校 6.8 62
香蘭女学校中等科・高等科 2.5 52
青稜中学校・高等学校 2.5 52
品川女子学院中等部・高等部 2.4 53
星野学園中学校・高等学校 2.3 53
大宮開成中学・高等学校 1.5 51
佼成学園中学・高等学校 1.5 51
足立学園中学校・高等学校 1.1 52
小西氏の教え子も、こんな経験をした。A君は中学受験時に早大系属を志望したが叶わず、中堅私大付属中学に入った。高校で再チャレンジしたいと、同研究所に通っていた。高校受験をする旨を、学校に申し出ると、教師はA君と親に「うちの高校からでも早大にこれだけ受かっている」と、のべ合格者数を示して引きとめにかかった。実際の早大進学者数は一割にも満たないそうだ。07年には、高校側が大学受験料を負担して優秀な生徒に大量出願させて、合格者を水増ししていた例が相次いで発覚した。あまりに悪質だと、最初にやり玉に挙がった大阪学芸高校では、一人の生徒に関西の有名四大学の計73学部・学科をうけさせ、すべて合格していた。センター試験の点数だけで合否がきまる入試を悪用したわけだ。教育者にあるまじき行為だが、裏には私学経営の厳しさが垣間見える。下位の私立校の中には定員割れを起こしている学校も少なくはない。学校選びに際して、進学実績にバラつきのある中堅校は判断に迷う。入ってみて合わなくても、他の学校に移るのは容易ではないから、より慎重になるべきだろう。

入学までに300万円かかる

まず、中学から私立に通わせたら、いくらかかるのだろうか。私立中学の入試問は小学校で習う内容では解けないため、塾通いが必須になる。以前は小学5年生からと言われていたが、年々早くなり、今は4年生からの塾通いが一般的だ。なかには3年生からカリキュラムがスタートする塾もある。全国に128教室ある大手某塾では3年間通うとトータルで約200万円かかる。難関中受験生の多い某塾は3年間で239万円だ。電車やバス通塾の場合、交通費や連絡用の携帯電話代もかかる。受験生の平均出願数は3、6校、受験料は1校2万~3万円なので、受験料は10万~20万円必要だ。すべて合計すると小学生の間で、300万円近くかかることになる。合格したら入学金や授業料を支払う。東京都が発表した、10年度の都立私立中学182校の初年度納付金(入学金、授業料、施設費など)の平均学は約92万円だった。最も高いのは玉川学園中学部(国際学級)の182万5千円。低いのは八王子実践中学の54万8千円だ。初年度納付金の他に、寄付金や学校債を募集する学校も半数近くある。任意だが、ほぼ全員が支払っているだろう。寄付金の平均額は約15万円、学校債は約13万円。最も高いのは聖心女子学院中学科の寄付金50万円だった。中高一貫教育とはいえ、高校に進む時は再度入学金を支払う。語学研修や修学旅行で海外に行く学校も多く数十万円かかる。公立に比べて通学範囲が広いため、通学定期代もかさむ。中高の6年間でトータルすると、学費だけで400万~600万はかかる。受験準備の300万円を足して700万~900万円は必要になる。それだけの投資をしても中堅高に通う8~9割の生徒は難関大学には入れない。中学受験をさせた時、「難関大は無理でも、6大学や地方の国公立大に入ればいいか」と考えた親はたくさんいると思うが、現実にはそれすら叶わない人のほうが多い。例えば、中学偏差値60を超えるある学校では、難関大に6大学や国公立大への進学者を足しても、卒業生の4割ほどだ。いくら教育環境が素晴らしくても、莫大な金を払って、どんな大学でも入れればいい、浪人してもいいと思う親はそうはいないだろう。それにしても、入試で成績のいい子供を集め6年間かけて一貫教育をして、どうして実績を上げられないのか、不思議だ。

私立のカリキュラムが問題

多くの私立校では、6年分のカリキュラムを5年で終えて、最後の1年は受験対策にあてている。トップ進学校だけでなく、中堅から下位の学校でも同じだ。前出の小西氏は、それが問題ではないかと言う。「一見、すごく合理的なやり方に思えるけど、ついて行けるのは、ごく1部のの優秀な子だけです。授業はどんどん前に進むから理解できないまま次に進む。宿題も多く復習している暇がろくにない。毎日、毎日そのくり返しで、どんどん消化不良になってしまうのです。特に歴史の浅い学校のなかには、充分はケアができていない学校が多い。実績になる大学を目指す生徒には手厚く、それ以外の生徒は質問すら受け付けてもらえないところもある。授業についていけず塾
通いしたり、公立中に入り直す生徒も最近は増えている。だが、公立でもイジメの対象になり、また他の公立に転校する「公立浪人」と呼ばれる子供まで出てきている。もちろん面倒見のいい学校や受験指導のノウハウを蓄えた学校もあるので、事前に良く調べる事だ。学費以外の塾代に関しては、公立中の2年、3年以外、他の学年は私立に通う生徒の支出の方が多い。より難関の大学を目指して塾に行く生徒もいるが、ついていくのが必死な生徒も多いのだろう。一方、公立中学から大学を目指す場合、高校受験は避けて通れない。表の値からも分かるように、受験を前に塾に通う生徒は多い。某大手塾などに1年通うと中2で40万~50万円。中3で50万~70万円かかる。大学受験になると、国公立か私立か、文系か理系か、志望校によってまるで違うので、かかる費用は一概には言えない。大手某予備校によれば、受験生が急に増えるのは高校3年になってからだ。浪人生の場合、1年間で約100万円かかるそうだ。私立か公立か、どちらを選ぶにせよ、教育にはお金がかかるのは確かだ。学校でも塾でも、費用に見合う内容がきちんと提供されているか、冷静に見極める目を持つことが、親としては必要だろう。
採用情報プライバシーポリシーサイトマップお問い合わせ